避妊法には様々な方法があります。
女性側が行う避妊法としてピル(経口避妊薬)の内服、子宮内リングの挿入、卵管結紮術などの方法もありますが、ピルは毎日内服を欠かすことができないものなので、内服を忘れがちな方では、いざという時に役に立ちません。
子宮内リングは器具を体内に留置するために感染のリスクがあり、卵管結紮術は男性避妊手術(パイプカット)に比べると大変な手術です。
色々な選択肢がある中で、100%確実で、かつ比較的手軽な手術で避妊できるのが、男性避妊手術=パイプカットです。
射精する白濁液のことを精子と呼ぶ場合が多いですが、正確にはあれは精子ではなく、精液です。
精液は、白濁液(精漿:せいしょう)に精子が混じったものです。
精漿は、精のう腺液、精管膨大部分泌液、前立腺液、カウパー腺液、尿道腺液が混じりあったものです。
一方の精子は睾丸で作られ、精管を通って精漿と合流し、精液となって射精されます。
パイプカットは別名、精管結紮術(せいかんけっさつじゅつ)と言います。精管という部分を切断して結ぶ手術、ということです。
精管(パイプ)を切断(カット)して結ぶと、睾丸で作られた精子が精漿と合流できなくなります。
つまりパイプカット後は精子が含まれない精液、つまり精漿のみが射精されることになり、100%妊娠しなくなります。
パイプカット後の精液は外見的に変化無く、性感も射精感も変わりません。
パイプカット後の精子は、精管を通って体外に排出することができなくなるため、体内で自然吸収されるようになります。
そしてパイプカットから数ヶ月くらい経過すると、睾丸は精子を作らなくなります。
ところで睾丸では精子以外に男性ホルモンも作られています。
男性ホルモンは精管ではなく、血管を通って体に分泌されるため、パイプカット後にも何ら変化はありません。
したがって、パイプカット後に男性ホルモンが減ることはなく、男性機能が低下する心配はありません。
なお、パイプカットは性病予防にはなりません。性病予防のためにはコンドーム着用が効果的です。
通常、陰のうの左右それぞれ1ケ所づつ、皮膚切開部分に局所麻酔注射を施してから手術を行います。
医療ガス(笑気ガス)麻酔や静脈麻酔を使用することも可能です。
陰嚢の皮膚を左右それぞれ1ケ所づつ、各1cmほど皮膚切開して、精管を引き出して切断し、切断した精管の両端を手術用の糸で結び閉じます(結紮)。加えて精管の両端を電気メスで焼きつぶして、確実に精管を閉鎖させます。
止血後に皮膚を縫合して終了します。手術後は患部の安静の為に2日間股間にテーピングし、1週間後に皮膚縫合糸を抜糸します。
パイプカット後に注意しなければならないのは、手術した直後はまだ避妊が完了していないということです。
パイプカット手術前に作られた精子はしばらくの間精管内生き続けるためで、パイプカット後に精管内に残っている残留精子が射精されて妊娠してしまう可能性があるのです。
手術後は、最低5回は射精を行って残留精液(残留精子)を全て排出してください。
射精の方法はマスターベーションでも性行為でも構いません。
性行為の際は、コンドームなどによる避妊が必要です。
5回以上の射精を行った後、再び来院していただき、パイプカット後に作られた精液を顕微鏡で検査して、精液中に精子が全く存在していないことを確認して、避妊手術が完了します。
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